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「日本の法人フランチャイジー」【books#1】

(この記事は2021年6月10日に作成されたものです。)

関西学院大学商学部の川端基夫(かわばた・もとお)教授の「日本の法人フランチャイジー―消費経済の知られざる担い手―」(新評論、2021年)をご紹介します。

フランチャイズ業界に身を置く方は、ご一読いただく価値があるのではないかと思います。

この書籍は、法人フランチャイジーの割合が約6割を占める日本のフランチャイズ研究において、個人加盟者を暗黙の前提とするアメリカの研究結果を取り入れるだけでは日本の実態に即した分析ができないのではないか、との考えから、日本の法人フランチャイジーの実態を解明しようとするものです。

フランチャイズの理論研究の紹介、データの分析や評価等の記述にも紙幅を割かれていますが、「ベンチャー・リンク」を含むフランチャイズ支援コンサルタントの役割等も踏まえた日本の法人フランチャイジーの拡大の経緯や、その業種別の特徴について、とても分かり易く整理されています。

これらの記述を読むだけでも、「あの会社は、このような歴史的背景の中で、このタイミングで登場したのか。」、「あの会社の本業は●●であるのに、兼業で●●のフランチャイズ・チェーンに加盟しているのは、そのような背景があったのか。」といった発見が多くありました。

弁護士の観点からは、「本部と加盟者間のパワー関係問題」についての分析に興味を持ちました(本書を購入させていただいたのも、目次にこの記述があったからです。)。

法人フランチャイジーの場合、フランチャイザーがアーリーステージにいると、店舗運営ノウハウの蓄積は法人フランチャイジーの方が勝っていることがありますし、そうではなくとも、フランチャイジーの規模(店舗数)次第では、フランチャイジーの発言権は非常に大きいものとなります。このような場合、フランチャイザーとフランチャイジーの関係は、(エージェント理論を前提とした)支配=従属の関係にはなく、共創関係(共に協調して成長を目指す関係性)にあるのではないかということが、具体例を交えて記述されています。

情報提供義務違反の問題に典型的に見受けられるように、フランチャイザーとフランチャイジーの関係は支配=従属の関係にあることを前提とされていることが多いです。ケースバイケースであることは当然の前提ですが、事案によっては、フランチャイザーとフランチャイジーが共創関係に立つとの認識は、非常に重要かと思います。