フランチャイズ

フランチャイザーの商標権管理の留意点【franchise #16】

はじめに

(この期日は2021年6月11日に作成されたものです。)

フランチャイジー(以下「加盟者」といいます。)は、フランチャイザー(以下「本部」といいます。)からノウハウの提供を受けることに加え、フランチャイズ・チェーンの商標が持つ顧客誘引力に期待して、フランチャイズ・チェーンに加盟することも多いです。

商標権の管理は、ノウハウの管理と同様に、フランチャイズ・チェーンの根幹を為す重要な事項となりますので、以下、本部による商標権管理の必要性と留意点について、それぞれ説明します。

商標権管理の必要性

本部が商標権の出願・登録を怠ったままの状態が継続すると、

  1. 第三者が本部の商標を使用しているにもかかわらず、本部は、第三者に対し、商標権に基づく差止請求及び損害賠償請求ができない。
  2. 第三者が先に商標権の登録を行い、本部及び加盟者が、第三者から、商標権に基づく差止請求及び損害賠償請求をされる。

といった事態が生じ得ます。

①のケースでは、本部は、商標権ではなく、不正競争防止法に基づく差止め等を請求していくことになりますが、この場合、本部は、自己の商標が「需要者の間に広く認識されている」又は「著名」であることを主張立証しなければならず、この立証に多大な労力及び費用を要することも多いです。

②のケースでは、本部及び加盟者は、第三者の請求に対し、商標登録の無効(商標法46条)、先使用権(商標法32条)、商標権行使の権利濫用(民法1条3項、最判平成2年7月20日民集44巻5号876頁)を主張立証していくことになりますが、この場合も、本部及び加盟者がその立証に多大な労力及び費用を要することが多いです。

いずれのケースでも、本部の主張が認められない場合には、本部及び加盟者は、以降、その商標を使用することができなくなりますので、フランチャイズ・チェーンの商標が持つ顧客誘引力は失われることになります。

このような事態を避けるためにも、本部としては、商標権の出願・登録を行い、商標権の管理を行わなければなりません。

商標権管理の留意点

商標権管理の留意点としては、

  1. フランチャイズ・チェーンで使用する商標が第三者の商標権等を侵害するものではないか
  2. 出願・登録する商標権がフランチャイズ・チェーンの展開をカバーするものとなっているか

の観点からのチェックが必要となります。

①の観点としては、フランチャイズ・チェーンを展開する前に、これから使用しようとする商標について、当該商標と類似するものも含め、既に第三者が使用していないかをチェックする必要があります。

これは、既に第三者が使用している商標又はそれに類似する商標を使用してしまうと、第三者から商標権又は不正競争防止法に基づく差止請求及び損害賠償請求を受ける可能性があるからです。

このチェックを自ら網羅的に実施することは難しいので、弁理士に調査を依頼することが多いです。

②の観点としては、

  • 「指定商品・指定役務」の範囲
  • 「類」(区分)の範囲

が、フランチャイズ・チェーンの展開をカバーするものとなっているかが重要となります。

「指定商品・指定役務」の範囲とは、事業の内容が役務(サービス)の提供である場合、その事業をカバーするためだけであれば、役務商標のみ登録すれば足ります。しかし、その役務(サービス)の提供に伴い、商品の製造・販売を行うのであれば、商品商標の登録も必要となります。

また、商標権の登録においては、政令で定める商品・役務の区分に従って商品・役務を指定する必要があり(商標法6条2項)、その区分は第1類から第45類に分けられています(商標法施行令2条、同別表)。

ここでの留意点は、本業の区分だけではなく、フランチャイズ事業に対応する区分も指定しておく必要がある、という点にあります。

例えば、フランチャイズ契約に基づき、本部は、加盟者に対し、経営指導等を行いますので、これに対応した区分である、「広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(第三十五類)の指定が必要となります。

また、本部が加盟者に対して開発しシステム等を提供する場合には、これに対応した区分である「科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの設計及び開発」(第四十二類)の指定も必要となります。

おわりに

以上、本部による商標権管理の必要性と留意点について、それぞれ説明しました。