フランチャイズ

フランチャイズ契約を締結する際に留意すべき法令【franchise #1】

はじめに

(この記事は2021年3月29日に作成されたものです。)

日本には、フランチャイズ契約の規律を目的とした、いわゆる「フランチャイズ法」は存在しませんので、フランチャイズ契約を締結する際に、特定の法令のみに留意すればよいわけではありません。

そこで、以下では、フランチャイズ契約を締結する際に留意すべき主な法令として、中小小売商業振興法と独占禁止法を紹介します。

中小小売商業振興法

中小小売商業振興法(「小振法」(しょうしんほう)と略されることもあります。)は「商店街の整備、店舗の集団化、共同店舗等の整備等の事業の実施を円滑にし、中小小売商業者の経営の近代化を促進すること等により、中小小売商業の振興を図り、もつて国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」法律です(中小小売商業振興法1条)。

中小小売商業振興法は、「特定連鎖化事業」を行う者が、当該「特定連鎖化事業」に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、あらかじめ、法定開示書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない、と規定しています(中小小売商業振興法11条1項)。

中小小売商業振興法において、「特定連鎖化事業」は、「連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの」と定義されており(中小小売商業振興法11条1項)、「連鎖化事業」は、「主として中小小売商業者に対し、定型的な約款による契約に基づき継続的に、商品を販売し、又は販売をあつせんし、かつ、経営に関する指導を行う事業」と定義されています(中小小売商業振興法4条5項)。

整理をしますと、「特定連鎖化事業」は、

  1. 主として中小小売商業者に対する事業であること
  2. 定型的な約款による契約に基づき以下の商品役務を提供すること
    • 商品の販売又は販売のあっせん
    • 経営に関する指導
  3. ②の約款に以下の定めがあること
    • 加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨の定め
    • 加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定め

を満たす事業となります。

そして、「特定連鎖化事業」に該当するフランチャイズ事業を展開している本部は、加盟者に対し、法定開示書面※1の交付とその説明を行わなければならない※2、ということになります。

なお、前記②⑴のとおり、「特定連鎖化事業」は「商品の販売又は販売のあっせん」を行う事業に限定されていますので、役務(サービス)の提供を行う事業はこの対象から外れることになります。

※1 法定開示書面の記載事項は中小小売商業振興法11条1項と同施行規則10条・11条に列挙されています。

※2 違反した場合の罰則はありませんが、主務大臣は、「特定連鎖化事業」を行う者に対し、法定開示書面の交付等を行うよう勧告でき(中小小売商業振興法12条1項)、これに従わない場合は、社名等を公表することができます(同条2項)。 

独占禁止法

フランチャイズ契約締結時に本部が加盟希望者に対して十分な情報を開示しないこと、フランチャイズ契約において加盟者のみを不当に拘束する規定を設けること、フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引において本部が加盟者に対して一方的に不利益を与えることなどが、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」といいます。)の違反として問題となることがあります。

最近では、2019年2月にコンビニエンスストアの加盟者が24時間営業を止めた「東大阪の乱」や、2020年9月に公正取引委員会が「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書」を公表し、「最近の諸論点」として「年中無休・24時間営業」と「ドミナント出店」に関する独占禁止法の考え方を新たにするなどの動きがあったことも有名な話かと思います。

フランチャイズ契約の独占禁止法上の問題については、公正取引委員会が「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(以下「フランチャイズガイドライン」といいます。)を公表しています。

フランチャイズガイドラインでは、以下のような場合に、独占禁止法上問題となり得ることが指摘されています。

  1. 本部が、加盟者に対し、加盟者の募集に当たり、重要な事項について十分な開示を行わなかった場合、ぎまん的顧客誘引に該当し得る(独占禁止法19条、2条9項6号ハ及び一般指定8項)。
  2. 本部が、加盟者に対し、フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施するために必要な限度を超えて、次のような行為等をする場合、優越的地位の濫用に該当し得る(独占禁止法19条及び第2条9項5号)。
    • 取引先の制限
    • 仕入数量の強制
    • 見切り販売の制限
    • フランチャイズ契約締結後の契約内容の変更
    • 契約終了後の競業禁止
  3. 本部が、加盟者に対し、自己や自己の指定する事業者から商品、原材料等の供給を受けさせるようにすることが、抱き合わせ販売等に該当し得る(独占禁止法19条、一般指定10項)。
  4. 加盟者に供給している商品について、本部が加盟者の販売価格(再販売価格)を拘束する場合、再販売価格の拘束に該当し得る(独占禁止法19条、2条9項4号)。なお、本部が加盟者に商品を直接供給していない場合であっても、加盟者が供給する商品又は役務の価格を拘束する場合、拘束条件付取引に該当し得る(独占禁止法19条、一般指定12項)。

フランチャイズ契約を締結する際には、以上に該当し、独占禁止法に違反する条項がないかを確認する必要があります。

おわりに

以上、フランチャイズ契約を締結する際に留意すべき主な法令として、中小小売商業振興法と独占禁止法を紹介しました。もっとも、フランチャイズ契約に関連する法律問題を解決するためには、これらの法令の他に、商標法、不正競争防止法、特許法、民法、商法、特定商取引法、景品表示法、労働基準法等の様々な法令が関連することには注意が必要です。

なお、フランチャイズ契約と民法の定型約款規定についても、別途記事を作成しましたので、よければご参照ください。