「コンビニが抱えるFCオーナー確保の悩み」
(この記事は2021年6月7日に作成されたものです。)
本日、日本経済新聞の電子版において、以下の記事を目にしました。
コンビニエンスストアの成長を支えてきたフランチャイズチェーン(FC)の担い手不足が課題になっている。加盟店オーナーが高齢化する一方、親族に事業を継ぐ人材がみつからないケースもあるためだ。後継者の不在はコンビニの持続的な成長に影響を及ぼしかねない。コンビニ各社は、親族以外に事業を承継したり、新規のFC参画を促したりするための仕組み作りを進める。
(中略)
ファミリーマートは3親等以内の血族に限っていた承継者をオーナーの子の配偶者などまで緩和している。FCでは、個人ではなく法人がコンビニ本部と契約して店舗経営を手掛ける場合もある。ファミマは2019年にこうした法人の代表者の名義変更も可能にした。店舗を切り盛りしている店長などに引き継ぐことを想定している。
セブン―イレブン・ジャパンは店舗の事業承継の対象として親族以外も認める例外事項を設けている。例えば店舗を引き継ぐ人材がオーナーの血縁者ではなくても、本部が素質や適性を見極めて後継者とみなすといった契約の柔軟運用だ。
(以下略)
日経MJ「コンビニが抱えるFCオーナー確保の悩み 加盟店承継、親族以外も」(2021年6月7日)
雑感
自明のことかと思いますが、やはり、フランチャイザー(以下「本部」といいます。)が、優秀なフランチャイジー(以下「加盟者」といいます。)を確保することが難しいのだと思います。
そして、弁護士である私には、本部で開発を担当する方の感覚は分かりませんが、加盟者が優秀か否かは、結局のところ、フランチャイズ契約を締結し、事業の運営をしてみないとわからないのではないでしょうか。
そうすると、加盟者の事業承継が問題となる局面において、本部としては、加盟者が希望する承継先ではなく、既存の優秀な加盟者に当該加盟者の事業の運営を委ねたい、と考えることもあるように思います。
このような場合、本部手動で事業承継を行うためには、以下の2つの条文が必要となります。
- 契約上の地位の譲渡禁止
- 先買権
まずは、加盟者が自由に事業承継をすることを禁止するために、契約上の地位の譲渡等を禁止する規定が必要となります。具体的には、「加盟者は、本部の事前の文書による承諾がない限り、フランチャイズ契約に基づく権利、義務その他契約上の地位を、第三者に譲渡又は担保に供してはならない。」といった規定です。
加盟者が法人である場合は、契約上の地位の譲渡ではなく、法人の株主又は代表者が変更することになりますので、「株式譲渡、会社分割、合併、増資、減資、代表者の変更、相続等により、加盟者の地位及び組織について重要な変更が生じる場合は、加盟者はその旨を事前に本部に報告し、その文書による承諾を得なければならない。」といった規定を設けておく必要があります。
そのうえで、本部が、加盟者の契約上の地位を、(将来的に本部が指定する第三者に譲渡するために)本部自ら譲り受けるか、本部が指定する第三者に直接譲り渡けさせる旨の先買権条項を設ければ、本部手動で事業承継を行うことが可能となります。
フランチャイズ契約書において先買権条項まで設けている本部はそこまで多くないと思いますが、今後の事業承継問題に対応するためには、先買権条項の挿入も検討する必要があるように思います。