はじめに
(この記事は2021年4月6日に作成されたものです。)
フランチャイズ契約の法定開示書面について、加盟者の立場から、特に留意すべき記載事項について整理します。なお、これらの事項は、本部の立場からも、十分な説明ができるように準備すべき記載事項となります。
法定開示書面の主な留意点
中小企業庁は、法定開示書面の記載事項についてチェックすべきポイント等を整理したパンフレットを作成していますので、フランチャイズ契約を締結しようとする加盟者は、このパンフレットを読んだうえで法定開示書面を検討することをお勧めします。
https://www.chusho.meti.go.jp/shogyo/shogyo/2019/download/31fy-FC-all.pdf
以下では、特に私が留意すべきと考える記載事項について、説明します。
- 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
- 経営の指導に関する事項
- 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
- 直近の三事業年度における加盟者の店舗の数の推移に関する事項
- 直近の五事業年度において、当該特定連鎖化事業を行う者が契約に関し、加盟者又は加盟者であつた者に対して提起した訴えの件数及び加盟者又は加盟者であつた者から提起された訴えの件数
加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
加盟者が、本部に対し、いつ、何を、どのように支払わなければならないのか、という点に関する記載事項です。
加盟者による事業の収支に直結する記載事項ですから、特に留意する必要があることは言うまでもありません。
それにもかかわらず、特に「徴収する金銭の額又は算定方法」についての誤解から、トラブルに発展する例が少なくありません。
加盟者としては、どんなに難しくても、自身において完全に理解するまで本部に対して説明を求めるようにしましょう。
経営の指導に関する事項
フランチャイズ契約における本部の中心的な役務提供の内容である経営の指導に関する事項です。具体的には、加盟に際しての研修又は講習会の開催の有無、内容、加盟者に対する継続的な経営指導の方法及びその実施回数が記載されています。
「経営の指導」についても、加盟者が想定していた内容が、実際に提供される内容と乖離があり、トラブルに発展する例が少なくありません。
加盟者としては、具体的にどのような経営指導を受けることができるのか、十分に確認しましょう。
契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
契約が途中で終了することを前提にフランチャイズ契約を締結する加盟者は少ないため、見落とされがちですが、どのような場合に契約が終了し、どのような金銭を支払わなければならなくなるのかは、きちんと確認する必要があります。
また、加盟者が事業を継続できなくなる事情が生じる可能性もありますので、その場合に、どのようにフランチャイズ契約から離脱できるのか、その場合、どのような金銭を支払わなければならなくなるのか、についてもあらかじめ確認しておく必要があります。
直近の三事業年度における加盟者の店舗の数の推移に関する事項
具体的には、各事業年度の末日における加盟者の店舗の数、各事業年度内に新規に営業を開始した加盟者の店舗の数、各事業年度内に解除された契約に係る加盟者の店舗の数、各事業年度内に更新された契約に係る加盟者の店舗の数及び更新されなかつた契約に係る加盟者の店舗の数が記載されています。
「加盟者の店舗の数」が増加しておれば、本部が展開するフランチャイズ事業は順調に成長していることが窺えますし、反対に、「加盟者の店舗の数」が減少しておれば、本部が展開するフランチャイズ事業に問題がある可能性が窺えることになります。
他方で、「加盟者の店舗の数」が増加しているにもかかわらず、例えば、「解除された契約に係る加盟者の店舗の数」や「更新されなかつた契約に係る加盟者の店舗の数」も多い場合には、加盟者の店舗の入れ替わりが激しいことを意味します。経営が成り立たないなどの理由で加盟者の店舗が減少しているにもかかわらず、それを上回るペースで加盟者を募集しているような場合でないかについては留意が必要であり、本部に事情を確認することも考えられます。
直近の五事業年度において、当該特定連鎖化事業を行う者が契約に関し、加盟者又は加盟者であつた者に対して提起した訴えの件数及び加盟者又は加盟者であつた者から提起された訴えの件数
本部と加盟者との間のトラブルが訴訟にまで発展していることを意味しますので、どのような理由で訴訟になっているのかは留意するべき事項となります。
おわりに
以上、フランチャイズ契約の法定開示書面について特に留意すべき記載事項について整理しました。