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ステルスマーケティングの違法性【news #1】

はじめに

(この記事は2021年4月14日に作成されたものです。)

フジテレビの女性アナウンサーが、美容室のステルスマーケティング(ステマ)をしていたのではないか、との疑いで、社内調査を受けているとの報道を目にしました。

ステルスマーケティング(ステマ)には、

  1. 事業者が、消費者を装って、自らが提供する商品・サービスの広告を行う場合
  2. 事業者が、インフルエンサーに報酬を支払い、インフルエンサーに広告であることを明示せずに商品・サービスの紹介等をさせる場合

があります。

今回の報道で疑いが生じているのは②の場合ですが、このようなステルスマーケティングは、消費者を騙すもので、社会的非難は免れませんが、具体的に何かの法律に違反する違法なものであるのでしょうか。

ステルスマーケティングの違法性

ステルスマーケティング(ステマ)を定義し、これを直接禁止する法律はありません。

もっとも、事業者は、不当景品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」といいます。)の違反となる場合があります。

景品表示法は、事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るも
のよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される表示を行うことを禁止しています(景品表示法5条1号及び2号)。

ステルスマーケティング(ステマ)それ自体が景品表示法に違反するわけではありませんが、インフルエンサーに紹介させた内容が、「実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される」ものである場合には、景品表示法に違反する不当な表示となります。

口コミサイトの口コミ情報に関するものではありますが、消費者庁は「商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るも
のよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。」(消費者庁「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」第2の2⑵(平成24年5月9日))との見解を示しています。

他方で、景品表示法が不当表示の禁止を命じているのは「事業者」ですので、インフルエンサー自体は、景品表示法違反にはならず、インフルエンサー自体に法的責任を追求することは難しそうです。

雑感(SNS等での紹介とサービスの関係)

法的責任の有無は措くとしても、インフルエンサーとしては、社会的非難を受けないように、ステルスマーケティング(ステマ)と評価される疑いのある行為は避けなければなりません。

しかし、インフルエンサーが、ある事業者が提供する商品・サービスを気に入り、これを自己のSNS等で紹介したところ、当該事業者がそのお礼として、サービスで商品・サービスを無償で提供した、というような場合、本来的には当初のSNS等での紹介はステルスマーケティング(ステマ)には該当しませんが、その疑いが生じた場合に、インフルエンサーとしてはこれを否定することが難しいこともあるような気がします。

インフルエンサーとしては、例え事後であっても、紹介した商品・サービスを提供する事業者からの利益提供を受けるか否かは、以上のリスクがあることを踏まえて慎重に判断する必要があることになります。

おわりに

以上、ステルスマーケティング(ステマ)の違法性等について解説しました。