News

フランチャイザーの躍進とフランチャイジーの確保【news #6】

フランチャイザーの躍進

(この記事は2021年6月2日に作成されたものです。)

ここ数日、一例ではありますが、以下のような、フランチャイザー(以下「本部」といいます。)の躍進に関する複数の記事に接しました。

埼玉県を地盤とする中古ゴルフ用品販売のゴルフ・ドゥは、カフェや室内で楽しめるシミュレーションゴルフを備えた新業態の店舗を今後5年間で10店舗出店する。世界的な脱炭素の潮流で石油需要が減り、ガソリンスタンドの事業撤退が相次ぐなか、その跡地を活用してオーナーにフランチャイズ加盟を提案する。

日本経済新聞「新業態、5年で10店出店 ゴルフ・ドゥ、給油所跡地を活用」(2021年6月1日)

「すき家」などを展開するゼンショーホールディングス(HD)の本業で稼ぐ現金収支(営業キャッシュフロー、CF)は、2022年3月期に前期比4割増の400億円強になる見通し。既存店の持ち直しと新規出店拡大が原動力となる。捻出した資金は成長投資に充当する。新型コロナウイルス禍のなかでも同社は持ち帰り需要の捕捉などで堅調で、攻めの姿勢を鮮明にする。

(中略)

新規出店の拡大も寄与する。今期は国内外で新たに500店舗超(前期は387店舗)を計画する。北米中心にフランチャイズチェーン(FC)で展開する持ち帰りすしの業態や中国で「すき家」の出店を加速。国内でもすき家や「はま寿司」など新型コロナ下でも好調な業態を出店し、売り上げを獲得していく。

日本経済新聞「ゼンショHD、営業キャッシュフロー4割増 今期、持ち帰り需要堅調」(2021年6月2日)

フランチャイジーの確保

当初は単純に「すごいなぁ」という程度の感覚で記事に接していたのですが、「フランチャイジーの確保はどうしているのだろう?」と疑問に思いました。

フランチャイズに関する法律相談を受けている中で、事業に関するお話も聞くことがありますが、(言うまでもないことなのでしょうが)優秀なフランチャイジー(以下「加盟者」といいます。)の確保はフランチャイズ事業において非常に重要な事項であることが分かります。

そして、既に市場が成熟しているコンビニエンスストア業界では、加盟者の確保が難しくなっており、既存の加盟者による複数店舗の経営が増えてきていると聞いたことがあります。もちろん、ここ数年のコンビニエンスストア業界の特殊事情による影響もあるのでしょうが、それだけが原因ではないように思います。

私は弁護士に過ぎず、直接フランチャイズ事業に関与しているわけではないので、的外れな話をしている可能性はありますが、以上の記事に接し、今後は、(コンビニエンスストア業界に限らず)既存の加盟者による複数店舗の経営が進み、加盟者の規模が大きくなっていく(メガフランチャイジーが増加していく)のではないかと感じます。

メガフランチャイジーの増加による法律問題の変化

フランチャイズ契約締結時の情報提供義務違反の問題、独占禁止法の優越的地位の濫用の問題のように、既存のフランチャイズの法律相談は、「一般に,フランチャイズ事業においては,フランチャイザーは当該事業に関し十分な知識と経験を有しているのに対し,フランチャイジーになろうとする者は,当該事業に対する知識も経験もなく,情報も有していないこと」(東京地判令和元年12月11日2019WLJPCA12118013)が多く、訴訟においても、これを前提とした判断がなされることが多いです。

しかし、メガフランチャイジーの増加が進めば、フランチャイズ契約における以上の特殊性がなくなり、通常の対等な契約当事者間の契約紛争と同様の判断がなされることが多くなっていくのではないかと思います(上記の例でいえば、本部による情報提供義務違反に対する加盟者の過失相殺の割合が上昇したり、優越的地位が認められないようなことが多くなっていくのではないかと思います。)。