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「『事故物件』告知、病死は不要 国交省が不動産契約で指針案」【news #5】

「『事故物件』告知、病死は不要 国交省が不動産契約で指針案」

(この記事は2021年6月1日に作成されたものです。)

日本経済新聞にて、以下の記事を目にしました。

国土交通省は30日までに、入居者らが死亡した「事故物件」について、不動産業者が売買、賃貸の契約者に告知すべき対象をまとめた初めての指針案を公表した。病気や老衰、転倒事故による死亡は告知の対象外と明記。殺人や自殺、火災による死亡は告知すべきだとしたが、賃貸は発生から3年経過すれば不要とした。

日本経済新聞「『事故物件』告知、病死は不要 国交省が不動産契約で指針案」(2021年5月31日)

調べてみますと、既に5月20日に、国土交通省から「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)が公表されており、同日から6月18日までパブリックコメント(意見募集)が実施されていました。

「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)

ガイドライン策定の背景

不動産取引においては、過去に他殺、自死、事故死など、人の死が発生した場合、いわゆる心理的瑕疵があるといわれます。

売主が買主にこれらの事実を事前に告知すべきか否かについては、取引目的、事案の内容、事案発生からの時間の経過、近隣住民の周知の程度等を考慮して判断されており、一義的なルールはありません。

また、宅地建物取引業者(売主又は媒介・仲介業者)が買主にこれらの事実を事前に告知すべきか否かについては、宅地建物取引業法において「取引条件又は当該宅地建物取引業者若しくは取引の関係者の資力若しくは信用に関する事項であつて、宅地建物取引業者の相手方等の判断に重要な影響を及ぼすこととなるもの」(宅地建物取引業法47条1号二)に該当するか否かにより判断されており、これも一義的なルールはありません。

そこで、これらの判断についての一定の考え方を示すものとして、国土交通省が、「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」にて検討を重ね、その結果が「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)として整理されました。

ガイドラインの概要

ガイドラインの概要は、以下のとおりです。

  • 対象事案=人の死に関する事案
  • 対象不動産=居住用不動産(事業用不動産は対象外)
  • 告知事案
    • ①他殺、自死、事故死その他原因が明らかでない死亡が発生した場合
    • ②自然死又は日常生活の中での不慮の死が発生した場合
  • 告知内容
    • 賃貸借契約
      • 告知事案①=発生後概ね3年以内の事案の発生時期、場所及び死因
      • 告知事案②=原則として、告知する必要はないが、例外として、発生後概ね3年以内に、人が死亡し、長期間放置されたこと等に伴い、特殊清掃等が行われた場合は、発生時期、場所及び死因並びに発見時期及び臭気・害虫等が発生した旨告知する必要がある。
    • 売買契約
      • 告知事案①=(期間の限定なく)事案の発生時期、場所及び死因
      • 告知事案②=賃貸借契約と同じ。