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不適切動画の投稿についての民事・刑事責任【news #2】

はじめに

(この記事は2021年4月16日に作成されたものです。)

2021年4月15日付けで、焼肉チェーン「韓国苑」は、アルバイト従業員による不適切な行為を撮影した動画(不適切動画)が個人のSNSアカウントで公開された事実を確認し、事実を認めたアルバイト従業員を懲戒解雇したとのリリースをしました。

このような、従業員が個人のSNSアカウントで不適切な動画を投稿する行為は、2013年頃から頻発し、「バイトテロ」とも呼ばれています。

比較的最近の事例では、2019年に、くらコーポレーションが、アルバイト従業員による不適切動画のTwitterへの投稿に対し、従業員の信頼回復及び同様の事件の再発防止のために、民事・刑事責任追及の準備に入ったことを公表していました。

それでは、具体的に、不適切動画を投稿した従業員は、民事・刑事において、どのような責任を負うのでしょうか。

損害賠償責任(民事)

民法は「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(民法709条)と規定しており、不適切動画を投稿した従業員は、会社に対し、会社が被った損害を賠償する義務を負う可能性があります。

損害賠償の対象としては、以下のような損害が考えられ、場合によっては数千万円にも及ぶ損害が発生する可能性があります。

  1. クレーム対応に要した人件費
  2. (店舗休業の場合)休業期間の営業利益
  3. (店舗閉鎖の場合)相当期間の営業利益、内装・什器等の未償却残高、退去費用(違約金、原状回復費用)

従業員が未成年者である場合には、未成年者を監督すべき地位にある親も損害賠償責任を負う可能性もあります(民法709条、714条1項)。

また、従業員に身元保証人がいる場合には、身元保証人も損害賠償額と同額の支払うをする責任を負うこともあります。

信用毀損及び業務妨害罪(刑事)

刑法は、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」(刑法233条)と規定しています。

不適切動画の投稿により、「普段からそのような不適切な行為をしているお店である」との誤った噂が広がることで、店舗の信用を毀損したり、また、大量のクレームに追われて通常の業務の遂行が妨害される結果になる場合に、信用棄損罪又は偽計業務妨害罪に該当する可能性があります。

信用棄損罪又は偽計業務妨害罪に該当する場合、事案によっては起訴猶予で終わることもありますが、起訴「三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金」が課せられることになります。

おわりに

以上、不適切動画を投稿した従業員の民事・刑事責任について説明しました。