フランチャイズ

フランチャイズ契約書の重要事項③【franchise #14】

はじめに

(この記事は2021年6月2日に作成されたものです。)

前回(フランチャイズ契約書の重要事項②【franchise #13】)に引き続き、フランチャイズ契約書を締結する際に、特にチェックするべき重要事項について、説明します。

契約上の地位の譲渡

加盟者が法人であっても、個人であっても、世代交代が生じる場合に、契約上の地位の譲渡に関する条項との関係が問題となります。

加盟者が法人である場合

契約上の地位の譲渡に関する条項は、「加盟者は、本部の事前の文書による承諾がない限り、フランチャイズ契約に基づく権利、義務その他契約上の地位を、第三者に譲渡又は担保に供してはならない。」との規定のみならず、「株式譲渡、会社分割、合併、増資、減資、代表者の変更、相続等により、加盟者の地位及び組織について重要な変更が生じる場合は、加盟者はその旨を事前に本部に報告し、その文書による承諾を得なければならない。」との規定がなされることが多いです。

したがって、加盟者において、将来世代交代をする必要が生じ、株主又は代表者を次の世代に交代させたいと考えた場合、自らの判断で実施することができるのか、本部の文書による承諾を得なければならないのか、がこの条項の有無により決まります。

加盟者が個人である場合

本部としては、当該加盟者を信頼し、フランチャイズ契約を締結することから、契約期間中の加盟者の交代や、加盟者の死亡による相続は認めていない(加盟者の死亡がフランチャイズ契約の終了事由とされている)ことが通常です。

したがって、加盟者において、将来世代交代をする必要が生じた場合に、契約期間中に加盟者を交代したり、自らが死亡した場合に加盟者の地位を相続させたいと考えている場合は、その可否を確認しておく必要があります。

中途解約

フランチャイズ契約において、契約期間を定めたにもかかわらず、その期間満了までの間に、一方の当事者が、自らの意思によりフランチャイズ契約を解約することを中途解約といい、その権利を中途解約権といいます。

中途解約権が認められるためには、フランチャイズ契約書等において、中途解約条項を設ける必要があります(反対に言えば、中途解約条項がなければ、中途解約をすることはできません。)。

本部としては、フランチャイズ契約が期間満了まで継続し、加盟者からロイヤルティ等の対価を受領し続けることが望ましいため、中途解約条項は、期間途中で事業の継続を断念する必要が生じ、フランチャイズ契約の中途解約を希望することがある加盟者のために設けられることが通常です。

そして、中途解約条項においては、中途解約権を行使する方法、時期及び違約金について規定されますので、特に加盟者において、以下の点を確認する必要があります。

  • 中途解約権の有無
  • 中途解約権の行使の方法
    • 通常は書面で通知する旨規定されています。
  • 中途解約権を行使できる時期
    • フランチャイズ契約の締結後数年間は中途解約権を行使できないと規定されていることがあります。
    • 解約の数か月前までに通知しなければならないと規定されていることがあります。
  • 中途解約権を行使した場合の違約金の有無及び内容

なお、あまりに高額の違約金を設定し、そのとおりに違約金を請求することは、公序良俗に違反するとして、裁判所において違約金請求が否定されることがあります。違約金は、安易な中途解約を抑制することで、フランチャイズ・チェーンの信用毀損の防止、統一性の維持、ロイヤルティ収入の確保等を目的とし、その目的を達成するために必要な範囲で違約金を設定する必要があります。実務的には、ロイヤルティの1年以内に収める例が多いようです。

契約解除

フランチャイズ契約書では、加盟者の債務不履行について解除事由を明文化するために、契約解除に関する条項が設けられることが多いです。

この債務不履行解除は、民法改正により、債務者の帰責事由は不要とされましたので、(民法541条、542条)、多くの本部は、民法改正に伴い、「加盟者の責めに帰すべき事由により」という文言を削除しているのではないかと思います。

その関係で、例えば、「加盟者の代表者が3営業日以上連絡が取れなくなったとき。」といった解除事由が規定されている場合、「加盟者の責めに帰すべき事由により」という文言がなければ、加盟者の代表者においてやむを得ず本部と連絡が取れなくても解除事由に該当してしまうことになります。

以上は一例ですが、特に加盟者においては、どのような事由が発生すると本部がフランチャイズ契約を解除できる状態になるのかを慎重に確認する必要があり、特に(やむを得ず)発生してしまうような事由がある場合には、事前に本部と相談し、当該事由だけでも「加盟者の責めに帰すべき事由により」との限定を付してもらうよう協議することが考えられます。

契約終了後の措置

フランチャイズ契約が終了すると、加盟者は、フランチャイズ契約により使用が認められていた本部の商号やノウハウの利用ができなくなります。

商号の関係でいえば、本部としては、加盟者が未だ本部のフランチャイズチェーンに属しているかのような表示を撤去させる必要がありますし、ノウハウの関係でいえば、本部としては、ノウハウが記載されている資料等を加盟者から速やかに返却を受ける必要があります。

ここで重要であるのは、加盟者が任意に撤去しない場合に、本部がその撤去を行うことができるように規定しておくことです。そのような規定がなければ、本部は、法的手続きによらなければ、加盟者の意に反して、加盟者の事務所に立ち入り、残置物等の撤去やノウハウが記載されている資料等の回収ができなくなります。

この場合において、意外に処理に困るのが、加盟者が残置した物の扱いです。フランチャイズ契約書において規定しておかなければ、加盟者の所有物を、加盟者に無断で、本部が処分することはできませんので、予め、残置物の所有権は放棄することをフランチャイズ契約書において規定しておくことが望ましいです。

また、フランチャイズ契約が終了した場合、本部が加盟者が所有する店舗の内装、設備、器具及び備品等を買い取る先買権を有し、本部が買取りを希望したときは加盟者はこれに応じる、といった先買権条項を設けることもあります。これは、競合他社が加盟者の内装等を買い取り、新規出店をすることで、本部の商圏をそのまま奪取することを防止するために設けられます。

おわりに

以上、フランチャイズ契約書を締結する際に、特にチェックするべき重要事項について、説明しました。