社会人の教養

社会人の教養としての法律知識【liberal-arts #3 賃借】

はじめに

(この記事は2021年4月11日に作成されたものです。)

社会人になるにあたって、それまでの自宅から引っ越しをする際、仲介業者に部屋を紹介してもらい、仲介業者を介して賃貸人と賃貸借契約を締結することが多いかと思います。

その際、仲介業者から賃貸借契約の説明を受けることになりますが、どのような事項に注目すればよいのかわからず、漫然と聞いているだけでは、後に想定外の事態に陥り、思わぬトラブルに発展することがあります。

そこで、以下では、賃貸借契約において最低限チェックすべき事項について整理します。

支払うべきお金/返還されるお金

支払うべきお金は何か、そのうち返還されるお金が何かを確認しましょう。

  1. 賃貸借契約を締結する際に支払うべきお金(敷金、保証金、礼金、前払家賃、仲介手数料、保証料等)
  2. 賃貸借契約期間中に支払うべきお金(賃料、共益費、管理費、駐車場等の使用料等)
  3. 賃貸借契約を更新する際に支払うべきお金(更新料等)
  4. 賃貸借契約終了時に支払うべきお金(解約金等)
  5. 賃貸借契約終了時に返還されるお金(敷金等)

特に、④及び⑤については見落とされがちですので、どのような条件で、いくら支払わなければならないのか又はいくら返還してもらえるのか、は事前にしっかり確認しましょう。

終了方法及び費用

賃貸借契約を終了させるために、いつまでに、何をする必要があり、そのためにいくら要するのかを確認しましょう。

終了方法及び費用は、賃貸借契約の期間満了をもって終了させる場合と、賃貸借契約の契約期間中に終了させる場合により異なりますので、いずれの場合についてもしっかりと確認しましょう。

具体的には、賃貸借契約の期間満了をもって終了させる(更新を拒絶する)場合は

  1. いつまでに更新を拒絶する旨の通知をすればよいのか
  2. 通知はどのようにすればよいのか(電話でよいのか、書面が必要であるのか、特定の書式を用いなければならないのか等)

などを確認する必要があり、賃貸借契約の契約期間中に終了させる(中途解約をする)場合は

  1. そもそも中途解約をすることができるのか
  2. いつまでに中途解約をする旨の通知をすればよいのか
  3. 通知はどのようにすればよいのか
  4. 解約金等の費用が発生するのか

などを確認する必要があります。

特に、中途解約については、賃貸借契約書において「賃借人は中途解約をすることができる。」と明記されていないとできませんので、必ず確認してください。

禁止事項その他の解除事由

賃貸借契約書では、例えば、ペット不可、タバコ禁止、ピアノ禁止、ベランダやバルコニーでのバーベキューの禁止など、賃借人がしてはいけないことが禁止事項として規定されています。

また、例えば、ペット、配偶者や子などの同居者の追加、転貸など、事前に賃貸人に届け出たり、許可を得たりしなければならないことも規定されています。

これらに違反した場合は、賃貸人が賃貸借契約を解除できる旨規定されていることが通常ですので、特にその部屋の利用方法等について想定していることがあれば、禁止事項に違反しないかは必ず確認しましょう。せっかく気に入って部屋を借りたはいいものの、したいことができない、といった事態に陥ったり、禁止されていることを知らずに禁止事項に違反して退去させられたりする事態に発展しかねません。

その他にも、解除事由として列挙されていることは遵守しなければ部屋から退去させられることになりますので、きちんと確認しましょう。

原状回復

賃貸借契約の終了に伴い、賃借人は、部屋を原状回復して賃貸人に返還しなければなりません。

原状回復とは、借りたときの状態に戻すことを意味しますが、原則として、通常の使用に伴う損耗や経年劣化まで修復して返還しなければならないわけではありません。

しかし、特約において、例えば、通常損耗や経年劣化であっても、鍵の交換費用●万円、台所やトイレの消毒費用●万円については賃借人の負担とするとされている場合には、これらの費用を負担しなければなりません。

したがって、原状回復の範囲、程度についてもきちんと確認しましょう。

なお、実際の原状回復の場面になって、「本当にここまで修復しないといけないのか?」、「なぜこの修復にこんなにもお金がかかっているのか?」などの疑問を抱いた場合は、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を確認したり、金額が大きい場合には専門家への相談を検討しましょう。

おわりに

以上、賃貸借契約において最低限チェックすべき事項について整理しました。